国際会計基準IFRSと日本会計基準の違いとは?①


国際会計基準IFRSの基本を知ろう

国際会計基準IFRSについては、このページでもたびたび取り上げてきました。2015年の強制適用がうやむやになって以来、日本での適用は下火になりつつありますが世界のトレンドとしてはまだまだIFRSに流れている向きがあります。この流れに乗り遅れないようIFRSの基本を確認しましょう。さらに今回は日本の会計基準との違いをメインにしてご紹介していきたいと思います。

IFRS基本情報のおさらい

国際会計基準(International Financial Reporting Standards、略してIFRS 読み:イファース、アイファス)はイギリスはロンドンにある民間団体、「国際会計基準審議会(International Accounting Standards Board、略してIASB)」が設定する会計基準のことです。

大きな市場では2005年にEU内の上場企業に適用が義務化され、現在では110以上の国と地域で採用されています。実のところ大きな市場でIFRSが強制適用されていないのは日本とアメリカくらいです。

IFRSと日本の会計基準の違い

ここで本題。IFRSと日本の会計基準の違いはどこにあるのでしょうか。日本の会計基準との違いを明確にすることでIFRSのメリット、デメリットについて知る手掛かりとなります。

大まかに大別するとIFRSと日本の会計基準の違いは以下の3つに分けることができます。

1.原則主義と細則主義

2.貸借対照表重視と損益計算書重視

3.公正価値評価と取得原価価値評価

それぞれの会計基準の違いを何回かに分けて見ていくことにしましょう。

1.原則主義と細則主義

原則主義と細則主義の違い

まず1つ目の違いとして原則主義か細則主義かの違いです。

「原則主義」…基本的な枠組みのみを規定し、細かい部分についてはケースバイケースで判断することを想定しています。

「細則主義」…原則主義とは反対に細部までしっかりと規定を決めてしまい「このケースならこの処理」と恣意性をなるべく排して判断することを想定しています。

この二つの違いは法概念の違いでもあり「原則主義」は例えば「人に迷惑になるような悪いことをしてはいけない」というルールのようなもので、「じゃあ具体的に悪いことって何?」というのは個別具体的に判断します。「細則主義」は「人を殴ってはいけない」「人のお金を取ってはいけない」という予め具体的なルールを決めておいて実際に人を殴った人がいた場合に「人を殴ってはいけない」というルールを適用する、という考え方です。

日本の会計基準では細則主義を採用しています。細則主義というのは、会計処理のための判断基準や規定の内容を細部まで厳密に定めることで企業会計の透明性を高めるように定められています。

細則主義の長所・短所

細則主義の長所は、上記の通り細部まで定めているので基準の中でブレが生じない、企業間での比較可能性が担保されるというところです。ものさしが統一されているため比較しやすいということです。

細則主義の短所としてはきっちりかっちり決められているだけに抜け道が存在してしまうとその穴をついて不正に利用されやすい、という点です。先ほどの例でいうと「人を殴ってはいけない」「人のお金を取ってはいけない」というルールがあっても「じゃあ蹴ってもいいの?」「物なら取ってもいいの?」という疑問が浮かびます。対応して「蹴ってはいけない」「物を取ってはいけない」とすぐに追加されれば問題ないですが、その対応ルールができる前なら人を蹴ろうが物を盗もうがお咎めなしということになってしまいます。なにせルールがないのだから縛りようがないわけです。また、細則主義はルールが存在する本質も忘れられてしまいがちです。「人を殴ってはいけない」「人のお金を取ってはいけない」という条文にのみ意識が集中してしまい、なぜ「人を殴ってはいけないのか」「人のお金を取ってはいけないのか」のルールの本質「人に迷惑のかかることをしないようにしよう」が蔑ろにされがちです。

原則主義の長所・短所

一方、IFRSで採用されている原則主義は「人の迷惑のかかることをしないようにしよう」というルールの本質部分についてのみ条文化します。このように本質部分だけを取り上げることで様々なケースについて個別具体的に対応することができるのが長所といえるでしょう。細則主義が対応しようとするとありとあらゆる可能性を想定しなくてはならないためすべてに対応した条文を作るのは現実的に不可能です。であれば原則のみを設定して後はケースバイケースでという原則主義の方が包括的な基準を作成する際は向いているといえます。

とはいえ原則主義にも短所があります。原則のみを統一した基準としているため、企業間で細部にブレが発生しうるということがまず一つ。さらにこれには企業間の基準の認識の相違、ブレを埋めるための作業が必要になってきます。もう一つが企業の担当者が会計処理に対して基準の適用の判断を自ら行い、その判断の根拠を示さなければならないという点です。ルールの例でいうと「何が人の迷惑にあたり、その証拠はこれです」ということを各企業の担当者が社内的、社外的に示す必要があるということです。

IFRSが原則主義を採用した基準は「不正の防止」のため

いずれについても長所・短所が存在しますが、こと会計基準については不正の防止というところに重点を置いているため、IFRSでは原則主義を採用しているということになります。

次回は貸借対照表重視と損益計算書重視の違いについて見ていきたいと思います。