このコラムを読んでくださっている方から「もっと予算管理について基本的なことから聞いてみたい」という要望をいただき「予算管理とはなんぞや」というところをご紹介することにいたしました。
なるべく細かいところまで手が届くようにしていこうと思っていますので、お付き合いいただければ幸いです。
ではさっそく。
予算管理とは
1年の初めにその年の計画を立て、1年の終わりに実績と比較して分析を行い、その分析を織り交ぜながら次の1年の計画を立ててよりよい企業活動を行っていくための管理手法のことです。
予算管理の流れは、いわゆるPDCAサイクルというもので、
年度の始まりに1年の計画立てて予算を作成する(Plan)
年度内は計画した予算に基づいて企業活動をおこなう(Do)
年度末に年度の初めに立てた予算金額と実際に年度内で発生した実績金額を比較し分析する(Check)
分析の結果、得られた情報を業務レベルまでフィードバックし、その情報をもとに次の1年の計画と予算を作成する(Action)
の繰り返しで成り立っています。
このPDCAサイクル、よくダイエットに例えられたりします。
ストーリーだててお話ししましょう。
今年40歳を迎える独身会社員の余(あまり)さんは元旦に近所の河原から昇る初日の出を見て今年の目標を立てることにしました。
視線を落としてこの10年ほどでお腹の周りに住み着いてすっかり家族同様のお付き合いとなったお肉を掴みます。
余さんの目標はすぐに決まったようで、「よし!今年中に12キロやせよう!」と心に決めました。
そのために家に帰ると早速1年で12キロやせるためのやるべきことを決めます。
1年で12キロということは、1ヵ月1キロ。
運動と食事制限をどちらも取り入れた方が効率的だと考え、1日30分のウォーキングと何を食べたかと体重を記録するアプリを使ってレコーディングダイエットの合わせ技で勝負することにしました。
翌日から早速考えた通りにダイエットに勤しみます。そのおかげか体重は予定通り1キロ2キロと順調に落ち始めます。
余さんの努力は着実に実っているようです。
今日も余さんは体重計に乗って結果をみると顔がほころびます。
そんな順調な余さんの様子が変わってきました、それはその年の4月、すっかり春らしくなり暖かくなってきたころです。
最近同じメニューをこなしても、体重が落ちなくなってきました。
余さんの体がこの生活に慣れてしまったのかはわかりませんが、余さんはこの状況に少しガッカリ気味です。
同じころ、4月から入社してきた新入社員の歓迎会やお花見など飲み会の回数も多くなってきました。
元々飲み会が好きな余さん、ついついお誘いには乗ってしまいます。
内心「そろそろ抑えないとやばいかなぁ……」と思いつつ「まあ明日から元に戻せばいいだろう」と都合の良いポジティブさを発揮します。
そして余さんは自分への後ろめたさから飲み会のある日は食事の記録をつけないことが増え、徐々に体重計からも足が遠のいてしまいました。
そんなある日、会社で健康診断の通知を受け取った余さんの顔には脂汗に加えて焦りの色が見えていました。
「まずい……まずいぞ」
現実逃避していた余さんに再び自分と向き合わなければならない時がきたのです。
家に帰るとすっかりほこりをかぶった体重計に片足ずつそーっと足を乗せます。
あまりの恐ろしさに足元を直視できない余さんでしたが、覚悟を決めて目を開きます。
「……」
なんということでしょう。
体重計のデジタル表示は匠の正確さで現実を映し出します。
その数字は初日の出に向かって誓いを立てた日の数字を上回っていました。
予想を超える事実にすっかり打ちひしがれる余さん。
とはいえ健康診断の日までそう時間はありません。
余さんは決めました。
「よし、今から健康診断までできることをやろう」
それから余さんの試合前のボクサーのような生活が始まりました。
食事はほとんどとらず、水を喉が潤う程度口に含み、飴をなめて空腹を紛らわせていました。
まわりの同僚、部下は日に日にやつれていく余さんを見て心配そうです。
そして健康診断の日、余さんはなんとか一番落ちていた時の体重に戻し検査をパスしました。
ホッと胸をなでおろす余さんでしたが
「また元の生活に戻したらあっという間に逆戻りだ」
この数日間の地獄のような生活を思い返すと、再びウォーキングと体重計と私の生活に戻そうと決意するのでした。
それから余さんは飲み会の誘惑にもそれほど負けず、地道に目標通り体重を落とし続けました。
その年の大晦日。
余さんは1年間を共にした体重計を大掃除でピカピカに磨き上げました。
今年最後の体重測定です。
1年間の集大成といってもいいこの瞬間、余さんは煩悩を捨て体重計に乗りました。
背後からは巷で流行っているアイドルグループの歌がテレビから流れてきます。
心を無にして体重計の表示を見ると、そこには目標体重より少ない数字が表示されていました。
「……やった!」
感無量で1人ガッツポーズをとる余さんをちょうどテレビから流れてくる歓声が祝福します。今年は紅組が勝ったようです。
目標達成の喜びもそこそこに、用意していた祝杯のビール片手に余さんは自分の体重の推移を年始に立てた目標と見比べて独り反省会です。
「やはり春の飲み会のラッシュが響いたな」
アプリを操作して数字をグラフに変えるとそれは一目瞭然でした。
「その前後の数字はほとんど目標通りだし、春の飲み会の誘いには気をつけて来年もがんばろう」
こうして来年に向けて決意を新たにする余さんなのでした。
とても長くなりましたがいかがだったでしょうか。
余さんは1年の初めに「12キロやせる」という目標とそのための方法を考え(Plan)
設定した目標を基にダイエットをおこない(Do)
大晦日に記録アプリを確認して1年の体重の推移と春の飲み会での飲み過ぎ食べ過ぎが問題だったとわかりました(Check)
そして来年に向けて”飲み会の誘いに気をつける”という対策を来年に活かせるのでした(Action)
予算管理も基本的にこのサイクルに則っておこなわれます。
もちろん予算管理の場合は全社横断的に決定することが多いので実際に1年がスタートするよりだいぶ早く動き出さなければなりませんが。
というわけで今回は予算管理とPDCAサイクルという全体的な概念の考え方についてご紹介しました。